デザイナーが見出す主題は常に、歴史の探究、嗜好の再発見、衣服の構造の再考を介したTammeの中枢にある“既存の更新”というステイトメントと結びついてきました。デザインのオブジェクト(対象)の中軸には、アイテムの基となる要素や形式、伝統性を内包したスタンダードやオーセンティシティを象徴する──たとえば、ミリタリーウェア、テーラードといった“既存の制服”にあります。

24SSで、Tammeの軸をことさら、「(視覚的には)硬質なもの」だと捉え直したデザイナーは、「複数のものが混交し、一方向に流れる時間軸」と呼応する、「ひとつの物語的」な可能性の中に“考え方”や“作り方”を探求していきました──彼のビジョンは“柔らかさ”をTammeに加えるという選択に至ったと言います。「特にルックのあり方を介して“柔らかさ”を可視化することで、硬質なTammeの衣服が持つニュアンス──24SSでは、1960年代のカルチャー、アイテム、形式、印象にみられるような“相反性の共存”によって生まれる余白や軽さを表現し、今一度Tammeの衣服を説明したかったのです」

それは、ある一着の“ひとつの表情”として硬質に見えようとも、重層的で奥行きのあるデザインと、着用者の態度によって「流動的に着ることができる」というアイデアにも濃縮されています。これは単に複数の着方ができることや、ショート丈とロング丈の明瞭なレイヤー、ルーミーなボリューム、後ウエストにポイントをおいたバックコクーンシルエットに表れているだけではありません。

たとえば、生地と生地──または、生地と身体の重なりや透過について:点描のようなマイクロダットパターンと、ピンストライプウールやシアー素材にのせた生地とプリント、ブークレ糸と細番手糸の相反する糸で形成され、裏地をモチーフにしたシアーなオンブレストライプ。これらは、性質の変化や輪郭のぼやけ(柄、構造)を活かした無骨さと優雅さの共生にみられるコントラスト豊かな“柔らかさ”といえます。素材のみならず、ブランドにおけるベーシックな黒やグレーを中心としたカラーパレットから、軽やかな色相にシフトしたこともまた、SS24をユニークにしています。

さらには衣服のディテールが崩れることの確信や意図、もしくは“柔らかさ”の付与:身頃から裁ち続くポケットやタブなどは、普段ならマチで囲むところを身生地から繋がる部分を多くしたパターンワーク等をもって、今まで以上につながった構造を持ち、ディテールが分断しないようにファスナーはムシ隠しにされています。ミリタリーウェアの印象をもたらすファスナースライダー。または、丸紐や平紐を、長く垂れるスエードテープに置き換えることで、装飾的優雅さや女性性、奥行が付加され、ディテールそのものの性質が変化していく。

Tammeのデザイナーにとって、衣服を作ることは、「世の中と密かに繋がるためのツール」であり、メディウム(媒体)でもあると言います。彼の服作りは、玉田達也がクリエイションとデザインを介して社会と時代を眺望してきたことの現れであり、それらがブランドに浸透し、衣服を通じて他者に伝達されていくことを叶える唯一の手法でもあるのです。SS24のあらゆるプロセスを介した内省は、いくばくか“不自由さ”の自覚とともに、過去のコレクションへの「本質的で直接的な問いかけ」となっていきました。そして、シーズンコンセプトに“アティチュードの更新”を掲げたことはブランドヒストリーにおける前進的価値とも言い換えることができます。

Designer: Tatsuya Tamada
Photographer: Naoto Usami
Stylist: Tatsuya Yoshida
Hair & Make: Yusuke Morioka
Model: Akito (DONNA)
Writer: Tatsuya Yamaguchi
Press: Keitaro Nagasaka (Sakas PR)