今回紹介するForbearは2017年結成の東京を中心に活動する4人組バンド。
メンバーそれぞれの経験が反映されたタイトでありながら重厚さと繊細さが混在したアンサンブル、男女ツインボーカルで紡がれる印象的なメロディラインが魅力のバンドだ。8月に行ったこのインタビューでは、バンドの結成から今に至るまでの経緯や、今年2月にcinema staffの辻友貴が主宰するレーベル〈LIKE A FOOL RECORDS〉からリリースした最新EP『4songs』の制作背景などについて、メンバー4人に聞くことができた。
Interview: KanouKaoru
──よろしくお願いします。まずはForbearの結成の経緯を教えてください。
Hangover Taroh: 元々2015年頃から僕とMassive Kentの2人で飲みの席で新しいバンドをやってみようという話をしてたんです。
Massive Kent: その後僕が1年くらいシンガポールに留学してたんです。だから具体的に動き始めたのは帰国してからでしたね。
──Yoshigazerさんを誘ったのもそのタイミングだったのでしょうか。
Yoshigazer: 僕が元々やっているwho caresってバンドがあるのですが、そのバンドのギターボーカルのハルタさんづてに2人がHumのようなバンドをやりたいって話をしているのを知ったんです。
Massive Kent: そうですね、僕もそのハルタさんとはまた別のバンドというか一緒にスタジオに入ったりしてたんで。それで僕もYoshigazerの話は聞いていたんです。僕とYoshigazerは同い年っていうのもあって話しかけやすかったし。
Yoshigazer: その後偶然2人とライブハウスで会った時に、じゃあ一緒にスタジオに入ってみたいですねという話になりました。それが2017年頃だったと思います。
Hangover Taroh: 3人でHumっぽいのをやろうと2、3回スタジオに入って試してみたんですけど、全然できなくて(笑)これはやめようということになり……もう1人募集してみようという話になりました。
──今回取材するにあたって2017年当時の皆さんのTwitterでのやりとりを掘り返していたのですが、元々女性ギターボーカルで募集されていましたね。それは男女ボーカルでやってみたいという考えがあったのでしょうか、何かイメージしているバンドはありましたか。
Hangover Taroh: そうですね、Pity Sexが好きだったのでそれはイメージにあったと思います。
──その募集でWhisky Yokoさんからコンタクトがあったんですね。Whisky Yokoさんと皆さんは元々面識はあったのでしょうか。
Whisky Yoko: 別のバンドで対バンしたり、私がblue friendをすごく好きだったこともあって間接的に知り合いではあったんですけど、ちゃんと話すようになったのはその時からですね。
──なるほど、そして翌年5月のMuncie Girlsの来日ツアーで初ライブをされたんですね。
Hangover Taroh: 結構無茶振りな感じだったんですけど、この機会だからライブしようって話になって。その頃には4〜5曲は出来上がってましたね。あのタイミングで初ライブしてなかったらダラダラとスタジオ入ってるだけになりそうだったので、誘ってくれたSUMMERMANナカザワには感謝してます。
──それぞれご自身を構成する、あるいは特に印象深い作品やアーティストをいくつか教えていただけますか。
【Whisky Yoko】
Rodan / Rusty
森博嗣 / Wシリーズ
【Yoshigazer】
Pains of Being Pure at Heart / Pains of Being Pure at Heart
Kero Kero Bonito / Time 'n' Place
Dinosaur Jr. / You're Living All Over Me
【Hangover Taroh】
The Police / Reggatta De Blanc
Sunny Day Real Estate / The Rising Tide
Hum / You'd Prefer an Astronaut
【Massive Kent】
The Van Pelt / Sultans of Sentiment
Fiddlehead / Springtime and Blind
──ありがとうございます。皆さん少しずつ通過してきた音楽が違うのかなと思って、そこがバンドとしての幅の広さに繋がっているのかなと感じたのですが、逆に共通した理想のバンド像のようなものはあるのでしょうか。
Yoshigazer: そうですね、バンドをやる上でこういう感じの音をやろうとかざっくりしたコンセプトっていうと、USの元々ハードコアをやっていたシューゲイザー・バンドですかね。Nothingとか。なんとなくなんですが4人で共有しているイメージはあるのかなとは感じますね。
──普段の曲作りはどんな風にされているのでしょうか。
Yoshigazer: ボーカルが入る曲だと、僕やWhisky Yokoさんがそれぞれ持ち寄ったり、リズム隊の2人で先にスタジオに入って考えたりということが多いですね。そのざっくりしたネタをバンドで合わせながら曲にしていくので、あまり1人ががっちり作り込んでというやり方はしていないですね。
──Hangover TarohさんやMassive Kentさんが元々やられているバンドの印象もあってForbearはリズム隊がすごくタイトな印象があるのですが、YoshigazerさんやWhisky Yokoさんが持ってくる曲に対してどんなアプローチをされているのでしょうか。
Massive Kent: そうですね、ギターの2人が持ってきてくれた曲を僕らがあーだこーだと言ってしまうことが多いですね……
Whisky Yoko: もちろんいい意味で(笑)意外な展開とか私たちが思いつかないようなリズムからアプローチをしてくれることが多いと思います。
Massive Kent: 僕の印象としては2人ともギタリストなのにそんなにエゴが強くなくて幅があるんですよね、リズム隊があーだこーだと言った時にも。
Hangover Taroh: 引き出しが多いよね。
Massive Kent: そう、だからあまり喧嘩みたいなことにはならないですね(笑)
Yoshigazer: リズム隊がリードしてくれているなと思います。こんなアプローチを試したいっていう音源を2人が聴かせてくれることもあるので、それを参考にアレンジを考えてみたり。
Massive Kent: 最初はさっきHangover Tarohが話してたように、Pity Sexのイメージがあったと思うんですけど、活動を重ねるにつれてまたちょっとずつ変わっていっているのかなって実感はありますね。
──約2年ぶりの音源となる新作『4songs』を含めて、タイトルは全て〜songsで統一されていますよね、あまり作品単位でのコンセプトというのは意識することはないのでしょうか。
Hangover Taroh: そうですね、ない……ですね(笑)曲名は歌詞を書く2人に決めてもらってるんですけど。作品のタイトルはI Hate Myselfってハードコアのバンドが作品のタイトルを〜songsと付けているのを思い出して拝借しています。僕が勝手に決めてメンバーも特に意見しなかったのでそのまま使ってます(笑)
Massive Kent: その話聞いたことないね(笑)
Whisky Yoko: 私も今「え、そうなんだ」と思った(笑)
──新作『4songs』ではMVも撮られた「Read On」を聴いた時にこれまでの作品以上に曲や音作りが洗練された印象を感じました。作品単位でのテーマのようなコンセプトはあまり意図されていないというお話でしたが、サウンド面では何か意識された点はありましたか。
Yoshigazer: そうですね、サウンドエンジニアが今回新しくお願いしたDevuさんという方だったんですけど、得意な音のイメージがバンドで今出したい音にも合っていて、ミックスやマスタリングの面からも前のアルバムとは印象が変わってくるのかなと思いますね。
Hangover Taroh: 『5songs』をテープで出した頃って、まだライブ2本くらいしかやってなかったんですよね。その後〈LIKE A FOOL RECORDS〉の辻さんから声をかけてもらって『10songs』を出そうという話になった時もまだ5本くらいだったのかな。そこからすぐ制作に入ったのでライブをそこまでやってなかったんですよね。その後月1〜2本のペースになったんです。そこも大きな違いかなと思いますね。スタジオに沢山入るよりもライブのリアクションを見て細かなアプローチやスタイルを考えるやり方がForbearには合っていたんだと思います。
──〈LIKE A FOOL RECORDS〉からのリリースはどんな経緯だったのでしょうか。
Hangover Taroh: 辻さんとは元々残響ショップがあった頃から友達でよく遊んでたんですよね。自主でリリースした『5songs』を出した頃僕は中野に住んでたんですけど、辻さんから中野で飲みたいから付き合ってくれって連絡がきて。当時Massive Kentも近くに住んでたんで呼び出したんです。それで泥酔してるうちに「出そうや!」って話になったんだと記憶しています。
──そんな経緯があったんですね。皆さんそれぞれが今回の『4songs』のレコーディングでご自身のパートやバンドとして意識した点はありますか。
Massive Kent: Superheavenみたいなドラムが叩きたいってのはありましたね。
Hangover Taroh: あとは全体的に音を詰め込みすぎず、できるだけシンプルにってことも意識しました。詰め込みすぎるとちょっと日本的なアプローチになるのかなって。音数を増やしすぎないというのはバンドサウンドとしてもセオリーとしてずっとありますね。
Yoshigazer: ギターに関しては重ためって感じなのかな。サウンドエンジニアのDevuさんは結構ハードコアなバンドを手掛けているんですけど、音作りの面ではアンプの設定もDevuさんが結構見てくれてて、それが音源での重たさにも反映されているんだと思います。
Hangover Taroh: ドラムの音を重視したいと事前に言いました。今までの音源よりもエアー感というか、定位をはっきりさせたいのもありました。それでDevuさんに依頼したいなと思ったんですよね。
──Devuさんの手掛けてきた過去の作品を聴いてそう感じていたのでしょうか。
Massive Kent: 3人くらいエンジニアの候補はいたんですけど、色々聴き比べてみて理想のエアー感はDevuさんだったんですよね。
Whisky Yoko: そうですね、それがとても大きかったと思います。
──マーチもコンスタントに作られていてすごいなと思ったんです。その背景やこだわりなどを教えてほしいです。
Massive Kent: そうですね、デザインは友達に頼むことが多いですね、バンドの雰囲気もわかってくれているし。
Hangover Taroh: Massive Kentの仕事が印刷屋なんですよね、だからデザインがあればすぐ作れるっていうのは大きいと思います。
──そんな事情があったんですね(笑)マーチもそうですが、astheniaもblue friendもディストロであったり海外からのバンド招聘であったりとDIYな活動をされてきたバンドです。それがForbearの活動に何か影響を与えていると感じることはありますか。
Hangover Taroh: DIYというわけではないのですが企画は組みたいっていうのはあって。辻さんにリリースしてもらって、辻さんにレコ発を組んでもらって、全部やってもらうと(自分たちが)腐りそうだなと思うのでそこは考えるようにしてますね。
──最後に今後のライブ予定、バンドとしての長期的な展望などあれば教えてください。
Yoshigazer: 曲を作ろうという話はしてますね。『4songs』のレコーディング以降ずっと同じ曲ばかり演奏してたので。
Hangover Taroh: 〈Sunday Drive Records〉や〈New Morality Zine〉周辺のバンドみたいに、ハードコアとかシューゲイザーとかジャンル分けしないで活動できればいいなとは思います。
──あまりカテゴライズすることもされることもなく?
Hangover Taroh: そういう風にやれれば一番いいかなって。
Whisky Yoko: メンバーと楽しくやれたらそれが一番だなって、昔からずっとこんな感じなんです。
Yoshigazer: 僕もそうですね。楽しく続けられたらって感じで目標とかはあまりないんですけど、さっき話題に出た〈Sunday Drive Records〉や〈New Morality Zine〉周辺のようなUSのバンドが来日する際には一緒にやってみたいなとは思いますね。
New Release
Title: 4songs
CAT No. LFR019
Release Date: 2022-2-4
Format: CD/DIGITAL
Tracklist:
1. Read On
2. Belong
3. Discharge
4. Numb
5. Rodeo Crown (LIFETIME Cover) ※CD Only Bonus Track
Live Information
2022.9.23(Fri) 札幌Studio Coelacanth
2022.9.24(Sat) 札幌Pigsty
2022.10.1(Sat) 新宿NINE SPICES
2022.10.8(Sat) 八王子SAISEGIG
2022.11.26(Sat) 新代田FEVER Forbear Pre. “Rising Hands vol. 5”
Merchandise
Forbear “Black Longsleeve” (Design by Navi)
Forbear “Numb Tee” (Design by Navi)
Forbear
2017年12月にJoseph eats a snail、SADSUMMER、blue friend、astheniaのメンバーらで結成。
2018年5月に開催されたWaterslide Records pre. “Muncie Girls JAPAN TOUR”にて初ライブを敢行する。
2019年1月、1st EP『5songs』をカセットテープでセルフリリース。
2020年1月、1stアルバム『10songs』をLIKE A FOOL RECORDSより10インチ+CDでリリース。
2022年2月、2nd EP『4songs』をLIKE A FOOL RECORDSよりCDでリリース。
Website: https://forbear2017.tumblr.com/
Twitter: https://twitter.com/forbearband
Instagram: https://www.instagram.com/forbearband/